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ザ・論点 前門の小沢、後門の橋下 苦渋の野田総理
2012/05/09の紙面より
新日本海新聞社代表取締役社主兼社長 吉岡 利固
小沢一郎・民主党元代表が政治資金規正法違反罪に問われた事件は先月26日、無罪判決が出た。 小沢氏無罪で動揺その判決内容をつぶさに検討すると、私が以前から指摘していた通り「土地購入をめぐり、秘書から簿外処理することの報告を受け了承したが、違法性の認識がなく共謀に当たらない」との認定。実に常識的な判断で、判事の良識に敬意を表したい。 私は、以前から「小沢氏は事実関係を把握していたが、積極的に罪を犯す意図はなかった。単なるミステーク」といい続けてきた。これを犯罪とするのは無理があるが、検察は報告書を捏造(ねつぞう)してまで、検察審査会強制起訴という“裏技”まで繰り出しただけに、『暗黙の了承』を『共謀』と無理やり認定し、罰金などの軽い有罪判決が出される危険性は十分あった。 罰金でも何でも有罪になれば、小沢氏は政治的に抹殺される。そうならなかったことで、彼の復権は近い。党の盟友が晴れて無罪になったのに、野田総理や岡田副総理、前原政調会長らが戸惑いながら批判的なコメントをしていることが、現在の民主党政権の異様な体質を露呈している。 広がる中央VS地方消費増税をめぐる攻防では、今や民主党政権と最大野党自民党は完全に財務省官僚に丸め込まれ共同歩調。大手新聞社をはじめとするマスコミも“反小沢、消費増税推進”で一致している。一方で、橋下大阪市長をはじめとする地方首長からの反旗は燎原(りょうげん)の火のように燃え広がり、みんなの党や公明党などの野党を巻き込み、多くの地方新聞社もこれらの動きを支持している。つまり「中央対地方」の構図で政界再編がジワジワと動きだす予兆を感じる。 国民があれほど期待した政権交代劇は、民主党自体の幼稚さで自滅した。今やすべて官僚頼みに陥り、自民党化してしまった。野に下った自民党は一時の改革への意気込みは消え、以前のような官僚べったり政党に戻った。民主と自民がどちらも財務省のいいなりになっているのだから、官僚天国の完全復活だ。 財務官僚のうそ私自身がそうだったからいう訳ではないが、財務省官僚は、他省庁とは比べものにならない超エリート集団。ことあるごとに「増税しないと日本の財政は破綻する」と脅かし続け、自分たちの都合のよい数字や歴史背景、海外事情を我田引水して政治家や国民をごまかすことなど、彼らにとって至極簡単。国債残高増加のみをことさら強調するが、企業の財務諸表を読み取れる経営者なら常識だがバランスシートの債務と資産の両方を見なければならないのに、わざと債務だけを抜き出しているにすぎない。しかも、財務省所管の国債整理基金など既得権がある特別会計には、絶対手をつけさせない。 こんなからくりは、“大人の政治家”小沢氏には通用しないし、不況下での増税が国民生活にどれだけ大きな悪影響を与えるかを小沢氏は知り尽くしているから、野田総理の懐柔策に応じるはずはない。 今後の政治日程は、野田総理がねじれ国会を乗り切れず、自民と組んで話し合い解散を前提にして「消費増税法案を通せるかどうか」に掛かっている。民主と自民は衆院小選挙区で議席を争っているケースが多い。もしこの時点で解散すれば、多くの選挙区で「反中央、反増税」を旗頭にした大阪維新の会やみんなの党などが割って入り、大躍進して政界再編は一気に加速する。 それを恐れて、消費増税法案がズルズルと国会会期延長で秋ごろまで持ち越されると、民主と自民はともに党首選で現在の野田、谷垣両氏が引きずり降ろされる可能性も出てくる。 日本国の不幸続く外国に目を転じると、米国がいよいよ大統領選が本格化し、国内対策で日本への政治経済の締め付けどころではない。欧州は、サルコジ仏大統領が落選し財政規律が一時的に緩みそうで、再び円高ユーロ安に向かう。つまりそう簡単には、今の円高基調は解消しない。 1年を過ぎた大震災被災地は中央官僚主導で復興は遅々として進まず、一時あれだけ国論を二分した環太平洋連携協定(TPP)も、増税にひた走る野田総理はもう関心すらない。極めて国民は不幸な状態に置かれたままだ。 復権する小沢氏への最大の期待は、財務省官僚に魂を奪われた政治家に「国民の生活が第一」の民主党マニフェストを正面から掲げて戦いを挑み、呉越同舟、同床異夢でまとまりを欠く改革勢力をまず一つに束ねるかつての剛腕ぶり復活だ。 (新日本海新聞社社主兼社長)
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