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海潮音 5月16日
冊子「伊勢大神楽(だいかぐら) 加藤菊太夫とその先祖」が、因幡伝統文化遺産活用事業実行委員会(委員長・伊藤康晴鳥取市歴史博物館統括学芸員)から発行された。2011年度から3年計画で取り組んでいる伊勢大神楽の調査の一部をまとめた◆大神楽は太神楽、代神楽とも書かれ、獅子舞と曲芸を組み合わせた神事芸能。三重県桑名市に本部を置く「伊勢大神楽講社」のものは国重要無形民俗文化財となっている。同講社に属する6組のうちの1組が、鳥取県南部町の加藤菊太夫さんの組だ◆伊勢大神楽は江戸時代、全国を回って伊勢信仰を広めた。因幡・伯耆も盛んに回った。かつては高野聖など諸国を歩いて信仰を広めた人々がいたが現在はほとんどが姿を消し、一年間活動しているのは伊勢大神楽だけという◆今は鳥取、島根、岡山、兵庫県など西日本を回る。昭和20年代までは鳥取市街地にも来たようだから、年配の方で覚えておられる方もいるだろう◆伝統的な芸能を、旅をしながら演じるという昔の形態がそのまま残ったことは驚きであり貴重だ。伊勢大神楽の魅力と、それを歓迎する住民がいて初めて成り立つ。実行委のこれからの研究で、伊勢大神楽と地域との関わりが明らかにされることを期待したい。
5月15日
Jリーグの最初の試合が行われたのは1993年のきょうだった。レーザー光線に彩られた開幕セレモニーで「大きな夢の実現へ向けて一歩を踏み出す」と川淵三郎初代チェアマン。国立競技場の芝生に26歳のカズが立っていた◆カズ、三浦知良(かずよし)さん(45)=横浜FC=はあの年に生まれた子どもが成人になろうという今日まで現役で居続ける。日本で最年長のプロサッカー選手。「キング」の呼称が大げさに響かない◆著書『やめないよ』(新潮新書)には脚光の陰の苦闘もつづられている。鍛え続けたエンジン(心肺機能)は強くとも、走ればタイヤ(筋肉)はすり減り、サスペンション(関節)に負担は大きい。15歳で渡航したブラジルでの教え「1センチでいいから前へ」が気を支える◆ゴールを決めた後、大きく手を回すカズダンスには照れもある。だが「純粋な感動」を伝え続けたいのだという。かつて自分の踊りをまねていた子どもたちが今はチームメートだ◆10チームで船出したJリーグは今季、1、2部合わせて40チームが覇を争う。郷土のガイナーレ鳥取も奮闘している。地域に根差したチームを育むという当初の夢は形になった。一線を走り続けるカズから学ぶべきは、たゆまぬ、ということだろうか。
5月14日
優れた冒険家に贈られることしの「植村直己冒険賞」を受賞したのは、昨年秋にヨットで8回目の単独世界一周に成功した東京都の斉藤実さん(78)だった。来月2日には植村の故郷、兵庫県豊岡市で授賞式を兼ねた斉藤さんの講演会がある◆39歳の時、ヨットを始めた斉藤さん。数々の記録更新が偶然だったわけではない。体力づくりを欠かさず、毎日1時間は歩く。継続は力なり。あきらめずに頑張れば、夢はかなうことを証明してみせた◆「ほんものは続く、続けるとほんものになる」。同市(旧但東町)出身で但馬が誇る教育者・東井義雄(1912〜91年)の言葉が頭をよぎる。可能性を秘めた子どもたちへのエールだ◆東井は著書の中で、こう語りかけている。「一つのことが、ずうっと続くと、ほかのことまで、しゃんとしてくるんです。どんなつまらんことでもよろしいから、ここまで続けたという自慢話になるような自慢を育てていただきたい」と◆鳥取、兵庫、京都の3府県で山陰海岸ジオパークを発信し始めてから5年弱。観光振興などに期待される山陰の起爆剤が住民の誇りとなり、世界基準であり続けるための4年ごとの厳しい審査をクリアしながら、いつか“本物”になる日を信じてやまない。
5月13日
新米の記者時代、鳥取市役所の記者室が取材活動の根城だった。時代はまだ「昭和」。庁舎内や商店街を回ってネタを探し、記者室に戻って原稿を書いた。昼食は市役所食堂の「スラーメン(素ラーメン)」とカレーが定番だった◆この素ラーメンが、8日発売の「週刊SPA!」(扶桑社)に漫画で掲載された。同市出身の漫画家・谷口ジローさんの人気漫画『孤独のグルメ』の新作。読まれた方も多かろう。定評の精緻なタッチ。あの味覚がよみがえる◆その新米時代に、谷口さんを東京のアトリエに訪ねたことがある。ふるさとを離れて夢にかける人物の取材。谷口さんはまだ30代だった。足の踏み場もないほどの写真集や雑誌、資料の山が印象に残っている◆以来、谷口ファンの一人に。初期のハードボイルドも好きだが、やはりふるさとを題材にした『父の暦』と『遥かな町へ』がお気に入り。何度読んでも味わい深い。そして今回の『孤独のグルメ』。地元の登場はうれしく、誇らしい◆この素ラーメンだが、現庁舎が完成した1964年から続く人気メニューという。年齢にして48歳。今でも1日30〜40食を売り上げる。その市庁舎整備をめぐる住民投票は20日が投票日。さて、ご当地グルメの行き先は…。
5月12日
倉吉市関金地区の公民館長が辞職したことについて、同地区住民3団体が先日、議員の過剰な追及が原因だとして、市議会議長らに意見書を提出した。極めて異例のことである◆昨年1月、小学生2人がけんかしているのを館長が知り、ゲンコツした。議員は「暴力行為だ」と本会議一般質問で何度も追及し、罷免を要求。館長は「市教委や市、公民館の在り方まで問題が及び、周りに迷惑がかかる」と年末に退職した◆議会で議員が問題にした際、冒頭の3団体などは関係者の聞き取りをした上で「しつけの範囲内である」「日ごろから青少年の育成に熱意を持ってあたっており、館長として適任」「保護者も館長の行動をありがたいと思っている」と見解を示した◆それでも議員は追及を続け、館長辞職の事態に至ったことで、住民団体は「館長の行為は本当に罷免に値するのか。議員の追及は人権侵害ではないのか。議会案件として取り上げるべきことなのか」と問いかけている◆議員は信条、主張に基づき大いに発言したらよい。しかし、それは事実関係をしっかり踏まえた上でのことだ。この辺りがきちんと出来ていたか。良識は発揮されたかどうか。市議会は徹底調査をし、結果を住民に示さねばなるまい。
5月11日
大リーグで活躍した野茂英雄投手は「トルネード(竜巻)投法」で一世を風靡(ふうび)した。体をくねらせる独特のフォームで三振の山を築き、胸がすく思いだった。本物のトルネードは毎年、北米に甚大な被害をもたらしているが、日本でも近年、竜巻被害が目立ってきた◆茨城県つくば市で発生した竜巻の脅威。昨夏の猛暑、冬の豪雪、度重なる春の嵐、過去最大級の竜巻と明らかに地球の大気の動きが狂っていると実感する。地球温暖化による異常気象に今後も見構えなければならない◆エネルギー確保の観点で今夏の暑さの度合いが心配される。全国50基の原発がすべて止まり、関西などでは今夏、相当の電力不足になるといわれている。原発の再稼働が難しい現状では家庭での節電しか暑い夏を乗り切る手はない◆以前に山形弁で知られるタレント、ダニエル・カールさんの講演を聞いたことがある。「鳥取は全国で最も人口が少なく、最もエコな県でねえかえ」。ご本人は冬でも暖房をつけず、家でダウンジャケットを着るという筋金入りのエコ実践者である◆熱中症には十分気をつけながら猛暑を乗り切る工夫、風邪をひかない程度に酷寒に耐える工夫を実践したいものだ。鳥取からエコ生活を提案してはどうか。
5月10日
航路を地球儀でたどると、壮大なロマンに圧倒された。ヨットで世界旅行中のオランダ人夫妻が先日、境港に寄港した。10年前、夫61歳の時に出航。帰国は3年後の予定で「第2のハネムーン」と屈託がなかった◆イギリス、スペインなどを経て大西洋を南下し、南半球へ。南米最南端を回って太平洋に出て、イースター島、オーストラリアから東南アジア諸国を巡りながら北上。韓国・釜山から逆風の中、65時間かけて境港に着いた◆これまでの航海で最も印象に残っていることを聞くと、夫は「ポジティブ思考だから、すべてが素晴らしい」。妻も「大きな波が来て怖いときもあるが、世界各地で人に出会うと苦労も吹き飛ぶ」と快活に話した◆日本人の支援者は「ヨットで暮らしながら、いろんな所に滞在して人と出会い、人生を楽しんでいる」とうらやむ。「毎年約1カ月間、国民がバカンスを楽しむ国に対し、日本人は年中あくせくしがち」と文化の違いも指摘した◆夫妻のおおらかさと行動力に敬服するとともに、ワーク・ライフバランス先進国のオランダに思いをはせた。それに比べ、関越道バス事故を機に明らかになった、一部の業者の運転手の過酷な労働をはじめ、わが国の仕事と生活の調和は不十分だ。
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